「歴史の相対化」

　京町家を改修したオステリアコチネッラ。京町家の古い歴史を残しつつ新たな建材で改修され新旧が融合されたこの店で、店主の森山氏が10年に渡りお客様と共に育てられてきた空間がここにはある。一つの契機となった10年。この契機に改修を行うに当たり、まさにこのお客様と共に育てられた店内に刻まれた空間は、大切な新しい「歴史」として空間化する価値があると考えた。まさに、10年前に京町家の古材が改修により新たな歴史の息吹をもたらしたように、今回の改修によりこの10年で新たに蓄積された「歴史」の様相を表出させる設計を試みる。
　その設計手法として、日本美術や建築は古来より用いられる「見立て」という手法を使って表現を行う。「見立て」の手法とは、例えば枯山水のように実際には無いものを他のオブジェクトを用いて代用しあたかもそのものがあるかのように、さらにはオリジナルを凌駕する世界観を生み出す手法である。今回改修する箇所はこの「見立て」を用いて設計を行う。オステリアということも配慮し、日本のみならずイタリアの建築技法を「見立て」として用い、この店内に蓄積された歴史がより感じられる設計とした。