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オオサカ ソース プロジェクト −SOAS South Osaka All Stars−2016.03.26

平井 良祐   01. 概要 生野区というと一般的にあまり良いイメージを抱いている人は少ない。また、生野区も日本の他地域同様、人口減少と少子高齢化という社会の宿命に同じく直面している。そのため地域内でそれらを改善すべくまちづくり活動が行われている。しかしその施策はとても内向的で外部との接続が少ないため、うまく生野区の活性化に連結しているとは考えにくいのが現状である。 例えば2016年2月28日に行われた「第二回生野区持続可能なまちづくり活動支援事業」では活性化のための事業体の募集をしていたものの、その応募要項には「生野区における事業体」や「説明会への参加」など制限性の高い要項が多いため結局は大胆な施策が取れず結局進展しないまま雲散霧消してしまっている。しかし一方で生野区側としては明確な課題を提唱している。 人口減少、少子高齢化、空家率の上昇、製造業企業数の減少など、まちの活力が失われていくことに懸念があります。このような中、大規模災害、街頭犯罪などさまざまな危機事象に対応できるまちづくりが急務です。一方、「ものづくりのまち」であり、数多くの歴史的遺産にも恵まれ、コリアンタウンに象徴される国際色にあふれた魅力的な地域あるにもかかわらず、こういった地域資源が効果的に活用されていません。まちの活力を取り戻すため、区内外の方々にとって住みたい、住んでよかった魅力あるまちとおもって感じていただける取り組みが必要です。これらの実現のため、区民のみなさんの中から新たな地域社会の担い手をつくり、持続的に活動を行っていただける仕組みづくりが課題です。 – 生野区将来ビジョン平成25年3月生野区役所発行 この課題文から問題点として、日本全土が陥っている一般問題と、生野区が課題としている特殊問題があるということが読み取れる。一般問題に関しては、「人口減少」「少子高齢化」「空き家率上昇」があり、一方で特殊問題に関しては、「ものづくりのまちとしての衰退」「歴史的遺産の再評価」「コリアタウンを皮切りとした国際的地域活用」がある。つまり生野区の活性化にはこれら一般問題と特殊問題の双方への解答が必要となる。そこで今回、大阪の中でも群を抜いて空き家率が高いという生野区の背景を基に生野区の抱える課題を解決するまちづくりの提案を考える。さらに展望として、一般問題に関しては生野区以外の区にも当てはまる課題であるため、大阪の南エリアを中心とした空き家率を基としたまちづくりの一解法としてのパイロットプランとなることを目指す。   02. 提案 今現在、生野区役所まちづくり課では生野区の現況分析を行い、具体的な課題と将来ビジョンを掲げている。まずは生野区の意向に沿うためにも先般の「生野区将来ビジョン」内の内容と一部重複するが、ここで「4つ」の将来ビジョンを抑えておく。 【区の将来像】日々の暮らしの中で安全安心を実感できる住みやすく魅力あるまち ①安全・安心を実感できるまちづくり…区内で暮らすさまざまな方々が、日常においても、危機的状況においても、安全かつ安心に暮らすことができ、それを実感できるまちをめざします。 ②大きな公共を担う活力ある地域社会づくり…地域のみなさんが、自主的かつ自立的にまちづくりに取り組み、地域のことは地域で決める、活力ある地域社会をめざします。 ③自律した自治体型の区政運営の仕組みづくり…区民のみなさんが安全・安心を実感でき、積極的に地域活動を行えるよう、区民のみなさんとともにまちづくりに取り組む、拠点としての区役所をめざします。 ④魅力あるまちづくり…さまざまな方々が区内を訪れるとともに、区に住みたいと感じられるような、活力にあふれた魅力あるまちをめざします。 これらの課題に応えるべく生野区のまちづくり提案を行う。 上記の条件をクリアするためには、まず人々が行き交う、つまり人の流動性の高さを確保しなければならない。生野区も人口減少・少子高齢化が深刻なエリアであり、普段の街の様子は日中でもあまり人通りが多いとは言えない。つまり、人の流動性を高めるには日中でも人が行き交うためのきっかけを街に与えなければならない。それはある1つのコンセプトを軸としたまちづくりにより新たなブランディングによる価値提供が必要であるということだ。(例えば北区の中崎町が良い例であろう。中崎町では地元の人々が住んでいる住宅は残しつつ、空き家となっている古民家を改修してそこにカフェや雑貨屋・古着屋などを入れ、街全体を若者たちが集まるエリアとしてのブランディング化に成功している。)
そこで生野区で行うブランディングとして、「ものづくり」に着目する。この「ものづくり」というワードは生野区が課題として挙げている文面から引用している。生野区は大阪でも東側に属しており、東大阪は元来、中小企業の町工場が多く点在するエリアとして有名である。つまり、生野区に宿る「ものづくり」というポテンシャルを引き出すべくこのワードをコンセプトに提案を進めたい。 その提案として、「Makers’ Base」という最先端の道具を一般人に定額で貸し出し、素人でも様々なモノを作る事ができる基盤を提供している会社と共同し、生野区に工場(こうば)を設けることを提案する。生野区において長年培われた中小企業の専門知識と技術の取り扱い、つまり「伝統的」ものづくりと、Makers’ Baseにおける3D Printerや大型裁断機や窯などの最先端の専門道具と機械の取り扱い、つまり「現代的」ものづくりとをハイブリッドさせることによって、これからの新しいものづくりの在り方を提案する。例えば生野区在住の職人さんが、このMakers’ Baseにて大学生や若者たちを誘致してワークショップを開き、先達の知識と技術を継承し、工場でモノを作成する、といったストーリーも容易に描くことができる。このような区外の人たちと区内の住民たちが交流できる場を形成する橋渡しとしての「ものづくり」なのである。 ではその「ものづくり」の場をどこに設けるのか。ここで生野区の空き家問題に目を向けていただきたい。生野区は大阪市の中でも高齢化に比例して、住宅や工場の空き家率がかなり高い。この問題に応えるべく、これら空き家にMakers’ Baseの工場を点在させる。Makers’ Base Sapporo及びTokyoではビル1棟の中にすべての製作場所が収まっているが、ここMakers’ Base Osakaでは工場が分散させる。なぜならモノをつくる時、工場から別の工場へ移動しなければならず、その際に必ず街の中を歩くこととなるからだ。街の中を歩くことの大きな理由の1つはもちろん人の流動性を高めることにあるが、もう1つ、身体を使い歩くことで脳へ血液が巡り、脳の働きが活性化されよりクリエイティブな環境を形成することができる。アリストテレスがリュケイオンにて確立した逍遙学派は文字通り逍遙(散歩)しながら講義を受けたが、それは身体はすべて連動し身体を動かすことは脳の活性化に繋がると説いたからだ。同様に「クリエイティビティ」が必要なものづくりの現場で、この歩くという動作は生野区へ、ものづくりに訪れる人たちのクリエイティビティ活性化にも繋がり、つまりはそれらは顧客満足度にも繋がり「永続的」な街の活性化することへ直結するのだ。   03. 実行 —PHASE 1 まずMakers’ Baseを誘致するための空き家の点在場所のリサーチとして、桃谷駅近くの不動産屋「三鈴商店」にて資料を提供して頂き、ものづくりの工場として活用できそうな物件をリストアップする。それらの中心に受付としてレセプションとミーティングスペースを兼ね備えた場として古民家にリノベーションをかけて今後のあらゆるSOASプロジェクト関連のイベントを担保できるスペースとして設計する。検索する物件の分類として、 ①管理棟として中心となる物件 ②Makers’ Baseの工場となる物件 ③ものづくり中に泊まり込むことができるホステルやゲストハウスとなる物件 ④制作物を使用・販売できるショップとなる物件 上記の4つとなる。後者になればなるほど検索の優先順位は低いが、これらの物件を土台として生野区の生まれ変わりを図る。 —PHASE 2 次に必要なことは、生野区をくまなく歩きまわり生野区のポテンシャルを最大限に発見し引き出すことである。そのためにはやはり若い力が必要となる。そこで近辺の都市デザイン・建築・芸術系の学部を持つ大学と連携をし、フィールドワークを行う。(現段階で検討している大学は、大阪芸術大学、大阪工業大学、大阪成蹊大学、近畿大学、大阪市立大学、etc.)改めてここで重要であることは、1つのコンセプトを軸としたまちづくりにより新たなブランディングによる価値提供が必要であるということだ。つまり、例えば過去には大阪市立大学と生野区が協同した「オープンナガヤ大阪」というイベントがあったが、それは単発的な連携であり街に継続的な「価値」を与える連携ではなかった。その点を改善すべく、学生たちとはじめにフィールドワークを行い、街の良い点・悪い点を列挙し、生野区活性化への最適解を模索する。 —PHASE 3 フィールドワークの一環として「伝統的」ものづくりのリサーチが必要となる。つまり、生野区に居る職人たちの技術の分類化を行い、それぞれを最適なMakers’ Baseの「現代的」ものづくりの場へ昇華させる。この場合も不動産選びの際に元々(伝統的)金属工場であった場所を確保しておいて、意図的に新た(現代的)に最新の金属加工の機械を導入して新しい息吹を与えるということも可能である。そこで職人を招いてのワークショップを開くことで技術の「継承」が実現するのである。
—PHASE 4 いざ施設をつくるとなった時に活躍したいのが若手の建築家である。このプロジェクトでは多くの長屋や工場をリノベーションする必要があるため、その設計部隊としてやはり若い力を導入したい。前述した「オープンナガヤ大阪」のイベントはこのパートに属する。要は、特に管理棟となる中心の物件では、設計のみならず施工も含めてワークショップなど行いながら学生たちも巻き込み共にリノベーションをかけて建築を作り上げていくプロセスを体験してもらう。つまり、ものづくりは「建築」にまで昇華するのだ。 —PHASE 5 ある程度Makers’ Baseの工場がまわるようになってくると、次は宿泊施設やカフェ、ショップの設置となる。これらの運営事業体は現在の桃谷商店街と連携し、上手く地場産業の再活性化に繋がることが望ましい。  
生野区まちづくりイメージ(赤:makers’ base 青:hostel/guesthouse 紫:shops)
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