HANA architects&associates一級建築士事務所株式会社
〒604-8831
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【会社概要】
設立日:2021年4月14日
代表取締役:平井 良祐(一級建築士)[中]
取締役:永田 優一朗(一級建築士/管理建築士)[右]
【スタッフ】
中井 結花 [左]
その他設計協力者2名、アルバイト2名
【主要取引先】
学校法人西大和学園
株式会社ウィング
天一食品商事株式会社
株式会社朝日堂
ラセンス株式会社
【主要業務】
・建築の意匠設計・監理業務
・建築の設計に関連するコンサルタント業務
・建築の設計に関連するデザイン業務
【論考集】
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2022.01.22 微積分建築 −新たな建築哲学の試考−
平井 良祐
これまで学生期間を含めると15年近く建築と触れ合ってきているが、一体自分は何を考え建築を設計してきたのか、また設計していくのかをよく考えるようになった。昔よりクライアントとの距離が近いことで、一層強く現実的な社会問題であったり特に経済的な制約に直面することは多いが、その反面、冒険した案が実現することが少なくなり、自分の建築家としての立ち位置をどんどん見失ってしまいそうで、何か設計における軸となるものを設けねばと焦燥に駆られる日々である。
建築史を含めた世界の歴史も様々な出来事の系譜を踏まえる上でもちろん重要であるが、当然我々は今を生きているため、何より今の時代をきちんと見つめることが改めて大事だと、私は日頃より考えている。物心ついた時から目の前にはコンピューターがある生活を送り、まさにWEB1.0からWEB3.0までの進化と共に成長した我々の世代は、そのような世代だからこそ近年の世界におけるあらゆる事象の変化し続けるスピードに対して敏感で、前線で順応し続けてきたのではないだろうか。
その中で私が問題視している事は、技術及びAIの発達により世の中の様々な仕組み自体がブラックボックス化していっているということだ。単調な思考過程をなるべく省略化するために技術革新やAI導入を行うが、その範疇が徐々に人知を超え始めてきている。シンギュラリティと言われる2045年のAIが人間の知能を超える時がひとつのメルクマールとなりえるだろうが、その過渡期にある現在だからこそ見つけられる何かがないかと考えている。そしてそれは不安定な「ズレ」というものがこの世の中には数多く存在しているのではないかと考えた。例えばgoogle翻訳(fig.1)。翻訳システムはすべてブラックボックス化されており、我々は疑うことなくそこに文章を打ち込めば世界のあらゆる言語に変換できる。今後のAIの進化により言語間の行き来をいくらしようがディープラーニングにより意図もニュアンスも崩さなくなるが、現段階では少しの「ズレ」が発生する。ここに今の世の中の縮図と可能性がある。
漠然とした「ズレ」という表現ではあるが、まさに我々の設計活動においてもずっと「ズレ」を生み出す作業をしていたのではないだろうか。ポストモダニズムではデコンストラクションという脱構築、向かう方向は解体であった。そこから現在にむけてはその解体したものを改めて構築する再構築という方向を向いた。これは世界が環境問題を含め「再=Re」の概念が定着したことにもよるだろう。「再」定義・「再」構築・「再」解釈・etc..など改めて何かを行うという行為はそれは元々題材となる事象が存在することが前提で、現在の環境や状況下でその事象を改めて思考することを意味する。そのほとんどはオリジナルとの間に「ズレ」が発生する。この「ズレ」を生成する作業こそ「再=Re」であり、建築設計の一つの軸なのだと私は考える。この「ズレ」に良くも悪くも気づかず慣れて生活をしている我々の思考を喚起させる「再=Re」でもあるのだ。
そこで、時代の潮流から生まれたこの「ズレ」を建築的手法=マニエラとして「微積分」の考え方を導入してみる。微積分といえばライプニッツ、そして彼の襞・モナドという概念で有名だが、その中でのトポロジカルな思考過程もこのマニエラに取り入れる。ここではその建築空間における「微積分」の可能性を探る(fig.2)。
この世界は様々な要素によって構築されている。この要素はAIや技術の進歩により多様化し複雑化され、オートポイエーシス的広がりをみせる。思想が枯渇した現代においてこの要素を丁寧に紡ぎ出し再構築することこそが未来への活路を見い出す道ではないか。そこで、この要素を紡ぎ出す行為を「微分行為」、再構築する行為を「積分行為」と定義する。建築において、この要素とは光、グリッド、高さ、開口部、静けさ、素材感、etc..など無限に多層化された空間のパーツといえる。その空間のパーツを特筆し、再解釈する行為がまさに「微分」となる。その後、現代社会の諸問題・環境・クライアントの条件など外的要因を踏まえた上でその要素を再構築していく行為が「積分」となる。ここで重要であるのは「積分」まで行うということだ。この微分→積分という行為を経ることでこれまで述べてきた「ズレ」が生じる。微積分の数式で例えるのであればまさにズレとは定数項である。それが2回、3回と微分を繰り返せばよりその振れ幅は大きくなり「ズレ」も複雑化する。まさにその「ズレ」を意識し、意図的な「ズレ」を構築させるカオス理論系の設計プロセスを目指す。
微積分において函数fと変数x(x=α,β,…)が存在するが、変数xを「要素」として考えるならば、函数fはその要素の集合体=空間と定義できる。そこで函数f=space(空間)とする。この条件の上、まずはユークリッド幾何学上での空間=spaceについて考える(fig.3)。
まず核たる3次元のspaceがあり、各要素により微分を行えば2次元のsceneがそれぞれ生まれる(→)。例えば光という要素でspaceに微分を行えば、光が中心に切り取られたsceneが空間から紡ぎ出される。そしてこれらのsceneが連続して繋がるものがシークエンス(- – -)となる。また、唯一時間=timeによる積分を3次元空間に行うことにより、4次元空間へと昇華される。しかしユークリッド上では2次元と3次元との行き来しか出来ず、変数x=要素の広がりは全て捉えきれない。そこで位相幾何学的な解釈で微積分を行う(fig.4)。
空間は複数要素から成り立っているため、n回微分(偏微分)を行うことができる。空間コンテクストもしくは設計意図としての微分(→)、そこに定数項という設計者のエッセンスを加えた積分(- – -)、この一連の設計プロセスを経た建築を「微積分建築」と名付けた。
ともあれ建築設計においてひとつの軸となるものを生み出すことを夢想している。私が思う最も華々しかった日本の建築業界が1960年代。メタボリズム運動という思想に則りたくさんの建築家、さらには芸術家、グラフィックデザイナー、プロダクトデザイナーなど様々なジャンルに渡って同じ思想のもと日本を設計・デザインした。そんな夢のような状況が再び来ることを期待して、一提案としてこの「微積分建築」を提唱する。
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2016.03.26 オオサカ ソース プロジェクト −SOAS South Osaka All Stars−
平井 良祐
01. 概要
生野区というと一般的にあまり良いイメージを抱いている人は少ない。また、生野区も日本の他地域同様、人口減少と少子高齢化という社会の宿命に同じく直面している。そのため地域内でそれらを改善すべくまちづくり活動が行われている。しかしその施策はとても内向的で外部との接続が少ないため、うまく生野区の活性化に連結しているとは考えにくいのが現状である。
例えば2016年2月28日に行われた「第二回生野区持続可能なまちづくり活動支援事業」では活性化のための事業体の募集をしていたものの、その応募要項には「生野区における事業体」や「説明会への参加」など制限性の高い要項が多いため結局は大胆な施策が取れず結局進展しないまま雲散霧消してしまっている。しかし一方で生野区側としては明確な課題を提唱している。
人口減少、少子高齢化、空家率の上昇、製造業企業数の減少など、まちの活力が失われていくことに懸念があります。このような中、大規模災害、街頭犯罪などさまざまな危機事象に対応できるまちづくりが急務です。一方、「ものづくりのまち」であり、数多くの歴史的遺産にも恵まれ、コリアンタウンに象徴される国際色にあふれた魅力的な地域あるにもかかわらず、こういった地域資源が効果的に活用されていません。まちの活力を取り戻すため、区内外の方々にとって住みたい、住んでよかった魅力あるまちとおもって感じていただける取り組みが必要です。これらの実現のため、区民のみなさんの中から新たな地域社会の担い手をつくり、持続的に活動を行っていただける仕組みづくりが課題です。 – 生野区将来ビジョン平成25年3月生野区役所発行
この課題文から問題点として、日本全土が陥っている一般問題と、生野区が課題としている特殊問題があるということが読み取れる。一般問題に関しては、「人口減少」「少子高齢化」「空き家率上昇」があり、一方で特殊問題に関しては、「ものづくりのまちとしての衰退」「歴史的遺産の再評価」「コリアタウンを皮切りとした国際的地域活用」がある。つまり生野区の活性化にはこれら一般問題と特殊問題の双方への解答が必要となる。そこで今回、大阪の中でも群を抜いて空き家率が高いという生野区の背景を基に生野区の抱える課題を解決するまちづくりの提案を考える。さらに展望として、一般問題に関しては生野区以外の区にも当てはまる課題であるため、大阪の南エリアを中心とした空き家率を基としたまちづくりの一解法としてのパイロットプランとなることを目指す。
02. 提案
今現在、生野区役所まちづくり課では生野区の現況分析を行い、具体的な課題と将来ビジョンを掲げている。まずは生野区の意向に沿うためにも先般の「生野区将来ビジョン」内の内容と一部重複するが、ここで「4つ」の将来ビジョンを抑えておく。
【区の将来像】日々の暮らしの中で安全安心を実感できる住みやすく魅力あるまち
①安全・安心を実感できるまちづくり…区内で暮らすさまざまな方々が、日常においても、危機的状況においても、安全かつ安心に暮らすことができ、それを実感できるまちをめざします。
②大きな公共を担う活力ある地域社会づくり…地域のみなさんが、自主的かつ自立的にまちづくりに取り組み、地域のことは地域で決める、活力ある地域社会をめざします。
③自律した自治体型の区政運営の仕組みづくり…区民のみなさんが安全・安心を実感でき、積極的に地域活動を行えるよう、区民のみなさんとともにまちづくりに取り組む、拠点としての区役所をめざします。
④魅力あるまちづくり…さまざまな方々が区内を訪れるとともに、区に住みたいと感じられるような、活力にあふれた魅力あるまちをめざします。
これらの課題に応えるべく生野区のまちづくり提案を行う。
上記の条件をクリアするためには、まず人々が行き交う、つまり人の流動性の高さを確保しなければならない。生野区も人口減少・少子高齢化が深刻なエリアであり、普段の街の様子は日中でもあまり人通りが多いとは言えない。つまり、人の流動性を高めるには日中でも人が行き交うためのきっかけを街に与えなければならない。それはある1つのコンセプトを軸としたまちづくりにより新たなブランディングによる価値提供が必要であるということだ。(例えば北区の中崎町が良い例であろう。中崎町では地元の人々が住んでいる住宅は残しつつ、空き家となっている古民家を改修してそこにカフェや雑貨屋・古着屋などを入れ、街全体を若者たちが集まるエリアとしてのブランディング化に成功している。)
そこで生野区で行うブランディングとして、「ものづくり」に着目する。この「ものづくり」というワードは生野区が課題として挙げている文面から引用している。生野区は大阪でも東側に属しており、東大阪は元来、中小企業の町工場が多く点在するエリアとして有名である。つまり、生野区に宿る「ものづくり」というポテンシャルを引き出すべくこのワードをコンセプトに提案を進めたい。
その提案として、「Makers’ Base」という最先端の道具を一般人に定額で貸し出し、素人でも様々なモノを作る事ができる基盤を提供している会社と共同し、生野区に工場(こうば)を設けることを提案する。生野区において長年培われた中小企業の専門知識と技術の取り扱い、つまり「伝統的」ものづくりと、Makers’ Baseにおける3D Printerや大型裁断機や窯などの最先端の専門道具と機械の取り扱い、つまり「現代的」ものづくりとをハイブリッドさせることによって、これからの新しいものづくりの在り方を提案する。例えば生野区在住の職人さんが、このMakers’ Baseにて大学生や若者たちを誘致してワークショップを開き、先達の知識と技術を継承し、工場でモノを作成する、といったストーリーも容易に描くことができる。このような区外の人たちと区内の住民たちが交流できる場を形成する橋渡しとしての「ものづくり」なのである。
ではその「ものづくり」の場をどこに設けるのか。ここで生野区の空き家問題に目を向けていただきたい。生野区は大阪市の中でも高齢化に比例して、住宅や工場の空き家率がかなり高い。この問題に応えるべく、これら空き家にMakers’ Baseの工場を点在させる。Makers’ Base Sapporo及びTokyoではビル1棟の中にすべての製作場所が収まっているが、ここMakers’ Base Osakaでは工場が分散させる。なぜならモノをつくる時、工場から別の工場へ移動しなければならず、その際に必ず街の中を歩くこととなるからだ。街の中を歩くことの大きな理由の1つはもちろん人の流動性を高めることにあるが、もう1つ、身体を使い歩くことで脳へ血液が巡り、脳の働きが活性化されよりクリエイティブな環境を形成することができる。アリストテレスがリュケイオンにて確立した逍遙学派は文字通り逍遙(散歩)しながら講義を受けたが、それは身体はすべて連動し身体を動かすことは脳の活性化に繋がると説いたからだ。同様に「クリエイティビティ」が必要なものづくりの現場で、この歩くという動作は生野区へ、ものづくりに訪れる人たちのクリエイティビティ活性化にも繋がり、つまりはそれらは顧客満足度にも繋がり「永続的」な街の活性化することへ直結するのだ。
03. 実行
—PHASE 1
まずMakers’ Baseを誘致するための空き家の点在場所のリサーチとして、桃谷駅近くの不動産屋「三鈴商店」にて資料を提供して頂き、ものづくりの工場として活用できそうな物件をリストアップする。それらの中心に受付としてレセプションとミーティングスペースを兼ね備えた場として古民家にリノベーションをかけて今後のあらゆるSOASプロジェクト関連のイベントを担保できるスペースとして設計する。検索する物件の分類として、
①管理棟として中心となる物件
②Makers’ Baseの工場となる物件
③ものづくり中に泊まり込むことができるホステルやゲストハウスとなる物件
④制作物を使用・販売できるショップとなる物件
上記の4つとなる。後者になればなるほど検索の優先順位は低いが、これらの物件を土台として生野区の生まれ変わりを図る。
—PHASE 2
次に必要なことは、生野区をくまなく歩きまわり生野区のポテンシャルを最大限に発見し引き出すことである。そのためにはやはり若い力が必要となる。そこで近辺の都市デザイン・建築・芸術系の学部を持つ大学と連携をし、フィールドワークを行う。(現段階で検討している大学は、大阪芸術大学、大阪工業大学、大阪成蹊大学、近畿大学、大阪市立大学、etc.)改めてここで重要であることは、1つのコンセプトを軸としたまちづくりにより新たなブランディングによる価値提供が必要であるということだ。つまり、例えば過去には大阪市立大学と生野区が協同した「オープンナガヤ大阪」というイベントがあったが、それは単発的な連携であり街に継続的な「価値」を与える連携ではなかった。その点を改善すべく、学生たちとはじめにフィールドワークを行い、街の良い点・悪い点を列挙し、生野区活性化への最適解を模索する。
—PHASE 3
フィールドワークの一環として「伝統的」ものづくりのリサーチが必要となる。つまり、生野区に居る職人たちの技術の分類化を行い、それぞれを最適なMakers’ Baseの「現代的」ものづくりの場へ昇華させる。この場合も不動産選びの際に元々(伝統的)金属工場であった場所を確保しておいて、意図的に新た(現代的)に最新の金属加工の機械を導入して新しい息吹を与えるということも可能である。そこで職人を招いてのワークショップを開くことで技術の「継承」が実現するのである。
—PHASE 4
いざ施設をつくるとなった時に活躍したいのが若手の建築家である。このプロジェクトでは多くの長屋や工場をリノベーションする必要があるため、その設計部隊としてやはり若い力を導入したい。前述した「オープンナガヤ大阪」のイベントはこのパートに属する。要は、特に管理棟となる中心の物件では、設計のみならず施工も含めてワークショップなど行いながら学生たちも巻き込み共にリノベーションをかけて建築を作り上げていくプロセスを体験してもらう。つまり、ものづくりは「建築」にまで昇華するのだ。
—PHASE 5
ある程度Makers’ Baseの工場がまわるようになってくると、次は宿泊施設やカフェ、ショップの設置となる。これらの運営事業体は現在の桃谷商店街と連携し、上手く地場産業の再活性化に繋がることが望ましい。
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